Classici giapponesi con furigana
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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Leggi 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 120.583 caratteri · 240 schermate
月は明るく蛙が鳴いているの。そこを、わたしは一人で歩きつつ、東京をどんなこころもちで思いやったことでしょう。いとしきものをのこし来にけり。焼原の真暗ななかにすこしずつ点々と灯かげが見えるような東京。いとしいものはその灯の小さい影の下に生活をしている。切ないまざまざとした光景。そこから離れてこうやって月明りの昔ながらの道を歩いている自分。全く異様で、納得しにくい感じでした。涙がこぼれかかるような思いでした。東京は可愛いわ。あんな東京で必死に生きている人々は、いじらしいいとしいと思います。東京のいじらしさには、特定の個人が中心となっているというばかりでなく、私の知っている、そして経験した様々の善意と努力とがそこにあるのですものね、ある特別な人にしても云わばその凝結のようなものだから、こういう痛烈な時期に、それがまだそこにのこっているときに自分だけ離れて来るということは本当に、出来にくいことです。あんな悲しいこころもちは初めてよ。あんな夜道は忘れ得ません。全く新しい一つの責任と義務として理解しなくては、月のうちにこちらに引上げて来るなどということは不可能そうです。