Classici giapponesi con furigana
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ごくちゅうき
獄中記
大杉 栄
Leggi 獄中記 (ごくちゅうき) di 大杉 栄 (おおすぎさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.988 caratteri · 58 schermate
そしてその色の黒い、醜い、しかし無邪気なにこにこ顔の、いかにも人の好さそうな細い眼で、じろじろとその男の顔をみつめながら言った。
「そうだ、お前は大阪にいたことがあるな。」
老看守はびっくりした顔付きをして黙っているその男に言葉をついだ。
「いや、旦那、冗談言っちゃ困りますよ。わたしゃこんど初めてこんなところへ来たんですから。」
その男は老看守の人の好さそうなのにつけこんだらしい馴れ馴れしい調子で、手錠をはめられた手を窮屈そうにもみ手をしながら答えた。
「うそを言え。」
老看守はちっとも睨みのきかない、すぐにほほえみの見える、例の細い眼をちょっと光らせて見て、
「そうだ、たしかに大阪だ、それから甲府にも一度はいったことがあるな。」
とまた独りでうなずいた。
「違いますよ、旦那、まったく初めてなんですよ。」
その男はやはりしきりともみ手をしながら腰をかがめていた。
「なあに、白っぱくれても駄目だ。それからその間に一度巣鴨にいたことがあるな。」
老看守はその男の言うことなぞは碌に聞かずに、自分の言うだけのことを続けて行く。その男も、もうもみ手はよして、図星を指されたかのように黙っていた。