Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たまつきばのいちぐう

球突場の一隅

豊島 与志雄

Leggi 球突場の一隅 (たまつきばのいちぐう) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.111 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

松井はその日午後から気分が晴々としなかった。考えるもの見るもの凡てが、しきりに胸の奥へ沈み込んでゆくような心地であった。そういう憂鬱は彼には珍らしくもなかった。彼はその時何時も自然に種々なことをしきりに考え込んだ。

で彼はまたぼんやりと取りとめも無い思いに耽りながら、村上とおたかとに突かかる球を見ていた。それからふと視線をそらして林を見ると、林は一心に球の方を見つめている。

その時松井の心にふと嫌悪の情が閃めいた。

松井と村上とはよく遅くまで球突場を去らないことがあった。林もよく遅くまで遊んでいった。度々彼等は一緒になることがあった。そういう時は、屹度一方が帰るまで片方も立ち上らなかった。何ということなしに自然にそうなったのである。

俺は何も林の向うを張るんじゃない、と松井は思った。第一おたかに対しても何の感情も持っていない。よしまた俺のうちに自分で自覚していない感情があるにしても、林なんかと競争をするものか。その妙にだだっ広い額、鼻筋の低い鼻、薄い髪の毛、ゆるんだ唇、もうそれで沢山だ!

彼はつと立ち上って、窓に凭れて外を眺めた。すぐ前に大きい檜葉があって、その向うの右手の隅に八手があった。