Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ことのそらね

琴のそら音

夏目 漱石

Leggi 琴のそら音 (ことのそらね) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.985 caratteri · 42 schermate

Aozora Bunko

「ええ」と云った後で、廃せば善かった、――一思いに正直なところを白状してしまえば善かったと、すぐ気がついたが、「ええ」の出たあとはもう仕方がない。「ええ」を引き込める訳に行かなければ「ええ」を活かさなければならん。「ええ」とは単簡な二文字であるが滅多に使うものでない、これを活かすにはよほど骨が折れる。

「何か急な御用なんですか」と御母さんは詰め寄せる。別段の名案も浮ばないからまた「ええ」と答えて置いて、「露子さん露子さん」と風呂場の方を向いて大きな声で怒鳴って見た。

「あら、どなたかと思ったら、御早いのねえ――どうなすったの、――何か御用なの?」露子は人の気も知らずにまた同じ質問で苦しめる。

「ああ何か急に御用が御出来なすったんだって」と御母さんは露子に代理の返事をする。

「そう、何の御用なの」と露子は無邪気に聞く。

「ええ、少しその、用があって近所まで来たのですから」とようやく一方に活路を開く。随分苦しい開き方だと一人で肚の中で考える。

「それでは、私に御用じゃないの」と御母さんは少々不審な顔つきである。

「ええ」

「もう用を済ましていらしったの、随分早いのね」