Classici giapponesi con furigana
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びわでん
琵琶伝
泉 鏡花
Leggi 琵琶伝 (びわでん) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.081 caratteri · 24 schermate
尉官は腕を拱きて、こもまた和ぎたる体あらず、ほとんど五分時ばかりの間、互に眼と眼を見合せしが、遂に良人まず粛びたる声にて、
「お通。」
とばかり呼懸けつ。
新婦の名はお通ならむ。
呼ばるるに応えて、
「はい。」
とのみ。渠は判然とものいえり。
尉官は太く苛立つ胸を、強いて落着けたらんごとき、沈める、力ある音調もて、
「汝、よく娶たな。」
お通は少しも口籠らで、
「どうも仕方がございません。」
尉官はしばらく黙しけるが、ややその声を高うせり。
「おい、謙三郎はどうした。」
「息災で居ります。」
「よく、汝、別れることが出来たな。」
「詮方がないからです。」
「なぜ、詮方がない。うむ。」
お通はこれが答をせで、懐中に手を差入れて一通の書を取出し、良人の前に繰広げて、両手を膝に正してき。尉官は右手を差伸し、身近に行燈を引寄せつつ、眼を定めて読みおろしぬ。
文字は蓋し左のごときものにてありし。
お通に申残し参らせ候、御身と近藤重隆殿とは許婚に有之候
然るに御身は殊の外彼の人を忌嫌い候様子、拙者の眼に相見え候えば、女ながらも其由のいい聞け難くて、臨終の際まで黙し候
さ候えども、一旦親戚の儀を約束いたし候えば、義理堅かりし重隆殿の先人に対し面目なく、今さら変替相成らず候あわれ犠牲となりて拙者の名のために彼の人に身を任せ申さるべく、斯の遺言