Classici giapponesi con furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Leggi 生々流転 (しょうじょうるてん) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 297.521 caratteri · 586 schermate
極月の月光は曖昧の朧気を潔癖性のように排斥するので、天地は真空ほどにも浄まっています。けれどもこの辺の田野の名物である榛の木立が畦道の碁盤目や綾菱形の上に立ち並び、その梢には乾びた実が房になって懸かり、吹きすさぶ夜風に絶えず鳴るのでその音からしてだけでも、微塵の玉屑が空に立ち昇るように感じられるそのためにか月下の世界は白檀の燻気ほどにはほのかな色に染められているように思われます。
まわりを見廻しますと、木枯の中に誰一人いず、地平線を取巻いて多那川の遠堤から榛の木の影の海の中に村落のやゝ黝んだのが混ってぐるりと見渡せます。北の方の空にだけ都会の灯のオーロラが眺められます。この夜景の中に藍染橋と土橋の袂へ二口の片側町の口がつき、それが町中へ入るに従ってだん/\家数の影は濃くなり、町家の群から抽んでて聳え立つ西隅の遊郭は煌々した灯を鏤めて怪物の棲む城のようです。
わたくしは眺めのおもしろさに暫くあたりを徘徊したのち、どうやら土橋に近づきました。材木店の勝手口や窓の灯も真近かに見えた途端に、わたくしは身を橋の勾配の蔭に伏せました。橋の向うの袂の堤の上に女一人の姿を見当てましたので。