Classici giapponesi con furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Leggi 生々流転 (しょうじょうるてん) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 297.521 caratteri · 586 schermate
堤の道は中天に差しかゝった月の光りを受けて、砥石の面のように滑かに照り返しております。細身の若い女は殆ど足音もなくその面の上を行きつ戻りつしております。片手に抱えている女の衣裳らしいものをとき/″\月に翳しては見あらため、くしゃ/\と揉み畳んで元のように手に抱え、また首を垂れて同じ路面を行きつ戻りついたします。歩調のせいでしょうか、それとも浴びる光の加減でしょうか、その身体の揺らぐ度に女の影は一重に見えたり二重に見えたりします。一重のときは単弁の花が咲いているように寂しく便り無く、二重になるときは重弁の花が弁の形ちを少しずつずらして咲いているように乱れごころを誘います。
そう見えるのは立ちかけて来た河霧のためでしょうか、風も止み加減になり、気温も急に暖かくなりました。わたくしは見咎められまいと橋の勾配の蔭に身を伏せたときから、女は材木店のご新造とは承知しましたが、女に何か嘆きの美しい姿があるまゝに、材木店のご新造さんとして眺めるより月下の嘆きの女としてもう暫らく眺めたく、そこですぐには現れ出ないで、窃眇とした夜気の中にその姿を覗いていました。考えて見れば美しさというものにも、製菓会社のビスケット包装室で働いた時以来しばらくお訣れでした。