Classici giapponesi con furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Leggi 生々流転 (しょうじょうるてん) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 297.521 caratteri · 586 schermate
と言って、師匠はわたしにそこで勝手に泣かしてその前で酒を飲み進んで行く。
「泣くだけ泣けば思いが晴れよう、おれは見ていてやる」これが師匠の僅に少年のわたしに与えて呉れる親身の親切なのだが、思いが晴れるほど泣けただろうか。わたしがやゝ安心して泣き出す姿形を見て、師匠は「なんてい野暮な泣き方をするんだ」と叱言を言ったり、「下手だなあ、それで芸人の泣き方といえるか」と窘めたり、口では終えなくて箸を逆持ちにした太い方で少年のわたしの小腕をぴしりと打つときもあり、自分が代って泣き方の模範を示して呉れるときもある。その躾けを十分受けてから師匠を床に寝かしつけ、「有難うございました。おやすみなさいまし」と自分の寝床へこれからがいざ自分のために本当に泣けるのだと行く時分は、夜明けの烏が鳴き、東の空は白みかかっている。早くちょっと一寝入りしとかないと師匠の朝湯のお伴に間に合わない。鯉丈に於ては芸も生活も躾の上ではけじめがなかった。
世の中に躾けというものがあって、これに較べたら自分の好みなぞというものは物の数でもないのだ。この事実をわたしは少年の日から骨身に厳しく刻み込んだ。