Classici giapponesi con furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Leggi 生々流転 (しょうじょうるてん) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 297.521 caratteri · 586 schermate
わたしはおまえの肉体も諦めるし、わたしの結婚の申込なぞ、おまえがいろ/\探して試みてよいところが見付からず、最悪の場合に転げ込む休息所として、数多い中に一枚加えといて呉れゝばそれで有難いと思っている。何がわたしをそうさせたか。それはおまえがわたしの話を聴き終って、われ知らず飛びかゝり、「おじさん、これからこそ、ほんとに/\自分のためによ」と言いつゝそこで夢中で与えて呉れた、たった二つの唇のためにだ。わたしはその濡れてしなやかな匂わしい小さな感触を、自分の唇から切抜き、記憶の押花として胸の中に蔵い込んでいる。とき/″\出して唇に宛てる。いつも色も香も湿り気も変らない小さな押花である。わたしがそれを唇に宛てるとき、たった二つのこの唇の小さな押花から女の真ごころが身体中に痺れるほども染み亘る。殻だらけのわたしが殻だらけの世の中で、これを得たということは、せめてこれからのわたしを幸福な男と思い込むのに唯一の手がゝりになるものだ。
蝶子、おまえはおまえ自身もあの刹那のときのおまえばかりでもあるまい。しかしわたしはこの唇二つによってあの刹那のときのおまえばかりとおまえを思い込むことが出来る。