Classici giapponesi con furigana
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せいあらば
生あらば
豊島 与志雄
Leggi 生あらば (せいあらば) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.046 caratteri · 47 schermate
羽島さん一家は、反対に田舎から都会に逐われて来た人達だった。社会の急激な変化と田舎に於ける収入の困難とは、そして特に地価と金利との急激な高低は、多くの地方人を都会のうちに逐い込んだ。其処には面倒な気兼ねや体面が無かった代りに、更に激しい生活の競争と底の知れない暗闇とが彼等を待っていた。羽島さん一家もそのうちの一つだった。身につけて来た僅かの資本で今の所に文房具店を開き、幸に場所がよかったため相当に客足もついたが、間もなく老母は日光と空気と運動との不足のために逝った。その後三年許りの間に、老母の死によって蒙った家政上の欠陥を恢復し、女学校を出た光子の身なりをととのえ、更に此度の彼女の病気に心ゆく手当を施すだけの収入は、勿論得られなかった。中学の英語教師を勤めている遠縁の壮助が、彼等のせめてもの頼りとする唯一人だった。
壮助はぼんやり室の中を見廻した。そして薄暗い片隅に散らばっている看護婦の所持品がまた彼の視線を引きつけた。
「もう看護婦が来て二月余りになる!」とふと彼は思った。そしてそのことが妙に彼を苛々さした。眼をつぶるとあの時の光景がはっきり浮んできた。