Classici giapponesi con furigana
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たはらしのはんざい
田原氏の犯罪
豊島 与志雄
Leggi 田原氏の犯罪 (たはらしのはんざい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 27.957 caratteri · 57 schermate
手のピストルに眼をやると、それは銀色に冷たく光っていた。凡てが恐ろしいほど澄み切っていた。そしてそのままに身洛ち着いていた。静かであった。
田原さんはじっと人影を見つめた。
その男は長い間石の上に蹲っていた。それから、袂にマッチを探って、紙巻煙草に火をつけた。煙草の先がぼっと燃えたが、すぐに消えた。それから男は立ち上った。首を垂れながら歩き出したが、五六歩すると何かに躓いたように飛び上った。ばさっという音がした。男は其処に立ち止ってじっと地面を見つめていたが、梧桐の枯葉を一枚拾い取った。それをうち振りながら男はまた数歩した。と突然男は堪えられないような身振りをした。そしていきなりマッチを擦ってその枯葉に火を移した。ぼっと焔が立った。
それらのことが、仄かな明るみを堪えた暗闇の中に、ぼんやり拡大した輪廓を以て田原さんの眼に映じた。そして梧桐の葉がぼっと燃え上った時に、田原さんの頭の透徹と神経の集中とは極度に達した。
「誰だ!」と田原さんは怒鳴った。
男は駭然としてふり返った。
その瞬間田原さんは男の下に向ってピストルを発射した。轟然たる音が闇の中に響いて男はばたりと地上に倒れた。