Classici giapponesi con furigana
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くじょしょうろく
痀女抄録
矢田 津世子
Leggi 痀女抄録 (くじょしょうろく) di 矢田 津世子 (やだつせこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 32.578 caratteri · 65 schermate
「わたしも、伝通院の前通りで見かけたことがありましたがね」
と、葛岡氏が言った。「去年の暮でしたかね。家内が、どうもそうじゃないか、って言うもんですからね。いや、家内には聞かせてあったんです。それが、声をかけようにも、どうにも、隠れてしまったもんで……」
葛岡氏は笑みを湛えた。「元々、人みしりをするようなたちでしたからねえ。それにしても、寿女さん、あの辺に知り合いでもあったんでしょうかねえ」
師匠も銀三も黙している。
いっ時、みんなは、黙していた。
葛岡氏は、銀三があたらしく淹れた茶を啜りすすり、話をそらした。
「昨日、蓼川家の売り立てがありましてね。わたしも、いつもと違って早くから出かけてみましたが、流石は蓼川家で、それは豪華なものでしたよ。殊に、お師匠さんの『山茶図』はカタログに出ていただけで、わたし共はもう喉から手が出るくらいなんですからね。見物をみると、想像以上のものでしたよ。入札して開けてみたところが、みんな欲しかったとみえて七千円以下はありませんでしたよ。七千円から八千円位の間でしてね、結局、八千二百円の人に落ちました。あれを最後に廻わしたところなど、向うの人もなかなか熟れたもんですよ。