Classici giapponesi con furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Leggi 痴人の愛 (ちじんのあい) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 179.399 caratteri · 353 schermate
そして私が留守の間にも決して外出することが出来ないように、赤いちぢみのガウン一枚を着せて置きました。それから私は、三日目の朝、会社へ行くような風を装って鎌倉を出ましたが、どうしたら証拠を得られるか、散々汽車の中で考えた末、とにかく最初に、もう一と月も空家になっている大森の家へ行って見ようと決心しました。もし熊谷と関係があるなら、無論夏から始まったことではない。大森へ行ってナオミの持ち物を捜索したなら、手紙か何か出て来はしないかと思ったからです。
その日はいつもより一汽車おくれて出て来たので、大森の家の前まで来たのはかれこれ十時頃でした。私は正面のポーチを上り、合鍵で扉をあけ、アトリエを横ぎり、彼女の部屋を調べるために屋根裏へ昇って行きました。そしてその部屋のドーアを開いて、一歩中へ蹈み込んだ瞬間、私は思わず「あっ」と云ったなり、二の句がつげずに立ち竦んでしまいました。見るとそこには、浜田が独りぽつ然として臥ころんでいるではありませんか!
浜田は私が這入ってくると、突然顔を真っ赤にして、
「やあ」
と云って起き上りました。
「やあ」
そう云ったきり二人は暫く、相手の腹を読むような眼つきで、睨めッくらをしていました。