Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しらゆきひめ

白雪姫

久生 十蘭

Leggi 白雪姫 (しらゆきひめ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.723 caratteri · 21 schermate

Aozora Bunko

一

一

ある夏、阿曽祐吉という男が、新婚匆々の細君を携帯して、アルプスのシャモニーへ煙霞の旅としゃれたのはよかったが、合の夢もまだ浅い新妻が、ネヴェという質のわるい濡れ雪を踏みそくなって、底知れぬ氷河の割目に嚥みこまれてしまった。

それはモン・ブランの麓、アルジャンティエールから六時間ほどのぼったところにあるラ・トゥルという危険な氷河で、マァヘッドのアルプス案内記にも、ガイドを要すと特に注意しているのに、阿曽はホテルからザイルとピッケルを借りただけで、案内も連れずに出かけたのである。

阿曽がシャモニーからアルジャンティエールのグラッソンネというホテルへ移ってきたのは、八月ももう末で、山の天候が変りやすい時季だった。その頃になると、雪質が一時間ごとに変化するといわれるくらいだが、そのうえ、四時近くになると、霧が出て山の形相を一変させてしまう。行きにあったボン(氷河の割目にかかった雪の橋)が跡形もなくなり、立往生してまごついているうちに、凍って霧に巻かれて遭難するというような椿事がよく起こる。

これはあとで問題になり、ポンヌヴィルの裁判所まで持ちだされたが、ホテルのマネージャアは、たいしてスポルティフにも見えない貧弱な日本人夫婦が、こんな悪い時季に、氷河専門の案内者でも汗をかく、ラ・トゥルの氷河へ出かけようなど