Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひゃっかえん

百花園

宮本 百合子

Leggi 百花園 (ひゃっかえん) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1718 caratteri · 4 schermate

Aozora Bunko

たった一人で、前に木版ずりの粉本を置き、余念ない姿だ。亭のまわりの尾花がくれにそれが見える。

写生の日傘と、東屋との間の道を、百花園と染抜いた袢纏の男が通る。続いて子供づれの夫婦が来かかった。

「お父さん、あんなトンネル、おうちにもあるといいね」

「うん」

「拵えてね」

「お家は狭いから駄目ですよ」

「ふーん」

父親、カメラを出した。

「さ、そこへ姉ちゃんとお並び」

六つばかりのその息子と十位の姉、雁来紅を背景にして、ポーズする。

「僕もよ、僕もチャチン」

姉娘が、母の手許からすりぬけて来た末子を、

「坊やちゃん、ここよ」

と自分の前に立たす。パチン。

男の子はすぐ歩き出して、写生している傘の中を覗いた。紙の上と実物の雁来紅の植込みとを、幾度も幾度も見較べた揚句、些か腑に落ちぬ顔つきで戻って来た。

「かあさん、あの人、黄色い葉っぱ描いてるよ」

おとなしやかな母親、それに答えず悠くり床几から立った。

「あ、そろそろお池の方を廻って帰りましょうか」

水浅黄っぽい小紋の着物、肉づきのよい体に吸いつけたように着、黒繻子の丸帯をしめた濃化粧、洋髪の女。庭下駄を重そうに運んで男二人のつれで歩いて来た。