Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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つぶてしんじゅう

礫心中

野村 胡堂

Leggi 礫心中 (つぶてしんじゅう) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.190 caratteri · 28 schermate

Aozora Bunko

越前守に毒を盛る者

「よく判りました、御前様」

「わかってくれるか、予の苦衷がのう」

「悪いのは越前の野郎一人」

江戸っ子のお豊は心機一転すると、もう甲斐守を怨む心などは微塵もありません。

「これ、声が高い、――が、一日置けば、一日の害毒、――ああ、私がもう少し若かったら、潰してならぬ家名を持たぬ身分であったら……」

鳥居甲斐は幾度も幾度も長大息しました。

「御前、――私ではお役に立ちませんか、私には潰してならぬ家名も、母親も、妹もございません」

「この御政治向さえ変れば、長い間入牢して居る、その方の父が助かる見込みもあろう」

「鳥居の御前様、どうぞ私に」

お豊の美しい顔が、激情に輝やきます。

「待て――」

甲斐守は、起上って唐紙を開け放すと、元の座に帰って来ました。さすがに頬も硬張って、暫らくは荒い息を鎮めて居ります。

深沈として更け行く向島の春の夜。

それは天保十四年三月、お藤が死んでから丁度一年の後のことでした。

越前守に毒を盛る者

西丸下、水野越前守の屋敷に、此程から新参の腰元が一人増えました。

天下の老中の屋敷に腰元一人増えたところで、何んの問題もないわけですが、越前守は衆に先んじて、改革の趣意を徹底させる勇猛心で、表高六万石、実収十五万石という堂々たる大名であり乍ら、その生活は二三千石の旗本にも及ばぬ質素なものだったのです。