Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
足利家のと、よく似てはいるが、違っていた。
「や。新田殿だ」
両家の紋は、世間でも往々によく間違えられやすい。で、要領のいい庶民たちは、こういって見分けている。
新田殿の鍋のふた。
足利殿の釜のふた。
木蔭から右馬介は今、息をつめて、鍋のふたを見送った。
幸いに、怪しみもされず、泥まみれな馬群の列や蓑笠の郎従は、たちまち通りすぎるかと思われたが、とたんに、彼方で、
「待て待て」
という声と共に、列が止まった。右馬介の姿を、列は一せいに振返っている。
「はて。見たような?」
「一色らしいが」
「えっ、一色右馬介か」
そんな口騒めきの中で、ひとり黙然とこなたを見すます陣座羽織に腹巻すがたの派手やかな人が、当の新田義貞らしかった。なに思ったか、義貞はちょっと馬を返して来た。
「そこな男。そちは足利殿の内か」
「はっ。御用捨下されませい。ただ今は、つい粗相をば」
「そんなこと、咎めるのではない。高氏どのは、まだ彼方の川を越えておらぬぞ。……義貞は他に急ぎもあるゆえ、出水の大河を、無理と知りつつ越えて来たが、人馬ともに、えらい難儀な目に会うた。くれぐれ、心して渡られよと、告げるがよい」