Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate

Aozora Bunko

「父上、今朝は御気ぶんは如何ですか。これより行ってまいりますが」

貞氏はめずらしく、白い病床の上に坐っていたが、

「お、出仕か」

顔だけを横に向けて、薄く笑い、そして自分の痩せた背を支えている家臣へ向って、

「彼れの狩衣が、襟もとでめくれておる。背すじの曲がりは見ぐるしい。直してやれ」

と、いいつけた。

家臣の手が、高氏の後ろへ廻って、衣紋のゆがみを正してやると、それを見ていた貞氏は、病床からうなずいて、

「よし、よし。……二年見ぬまに、また一ばい大きくなったものだ。こう見れば、そちもはや、たれにも劣らぬ一人前の男よ。それにひきかえ、口惜しいが、この貞氏は空蝉に感じる。いかにせん、この病体」

「なんの、お父上とて、まだ五十路、御養生次第では」

「は、は、は……。出先につまらんことをいって悪かったな。今日の御犬合せには、直々、鳥合ヶ原のお桟敷へ向うのか」

「いえ。御上意のほど、何かは存じませんが、その行きがけに、赤橋殿のお館へ立寄って欲しいとのこと。おそらく守時殿も御同道かと、ぞんじられます」

「そうか。鎌倉諸大名が集まる曠れての中、わけて太守の御前、いささかの進退にも、よう気をつけよ。