Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(一) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 246.214 caratteri · 495 schermate
特にお好きな曲は」
「さあ……。祇園精舎の初語りもよし、小督、忠度都落ち、宇治川、敦盛、扇ノ与一。どれも嫌いなものはないの」
「大原御幸は」
「わけても好きじゃ」
「では。……すみませんが、そこの琵琶をお取りくださいませぬか。大原御幸も、まだみなは覚えませぬが、習うたくだりだけを、弾いてみましょう」
袋を解いて、覚一は琵琶を抱いた。絃を調べ、音を問いながら、小首を傾げて、細い眼すじをなお細くしていたが、やがて一弾二弾、序ノ撥かろく。
――女院重ねて申させ給ひけるは。
わが身、平相国のむすめとして。
天子の国母となりしかば。
みな掌のままなりき……
母の草心尼は、聞きとれた。いや、見恍れてもいる。――これがわが子の修業の端か。ひと年、都に出て、他人のきびしい撥で打たれつつ習い覚えた曲の一つか。いじらしさよ。今宵、亡き良人もこの座にいませば……と、彼女は彼女の胸の奏でに、悲母の思いをせぐり上げられていた。
その時刻。――ちょうど、覚一小法師が、扇ヶ谷家の留守をほしいままにして、大原御幸の一曲を母に聴かせていた、同じ宵頃のこと。
鶴ヶ岡の社頭は、火に染まっていた。
赤橋家の門から、反り橋、若宮ノ辻までの、たくさんな庭燎が一せいに点火されたのだ。