Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
「おうーいっ」
芦屋ノ浦の夕暮れは、文字どおり墨絵のような芦や砂丘と蕭々たる風だけだった。
「おおうういッ……」
と、さっきからの芦の中の声に、どこか、はるかな陸でも、同じような声がこたえていた。
そのうちに、
「オオ、煙があがった」
「船をすすめろ」
「もっと先だ。あの煙が味方にちがいない」
と、それまでは用心ぶかく河口に船体を隠していた数十そうが、いちどに遠賀川の水面にみなその船影をあらわした。そして、えいえいと、川すじを深くのぼって来た。
親船とみえる一そうの船上では、さきに太宰府から赤間ヶ関まで、尊氏を迎えに渡っていた筑後ノ入道少弐妙恵(貞経)の子の頼尚が、水案内を勤めて、みよしに立ち、
「待った、待った。水夫の衆、宰相(尊氏)の御船はここらでとどまれ」
と、制止していた。
そして彼は、尊氏のいる胴の間の座所へ来て、
「はや宵に入って、物の黒白もわかりません。よも合図に違いはなかろうと思いますが、万一があっては大変です。それがしどもがまずその辺の陸地を先に物見して戻りますゆえ、もうしばらく、ここにてお待ちねがいまする」
と告げ、ただちに自己の一小隊だけをつれて陸へ上がって行った。