Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
……ざんねんです、ざんねんでございまする」
と、一切を告げた。
「…………」
頼尚は一時茫然とした。
涙も出なかった。
どっぷりと遠賀川は夜になっていた。
芦をわたる暗い風には、響灘のとどろきがある。
尊氏はまだ船の上だった。二月の星はいいようもなく肌ざむい。わけて敗軍の身、流亡の空だ。来しかた、明日の未来、尊氏は居眠ってでもいるように、船むしろに坐っていたが、心は複雑なのであろう。夜鳥の水音にも、ふと耳をたて、そしてまた半眼にもどっていた。
「はてなあ?」
やがて呟いたのは、幕将たちの一人だった。そこへ仁木義長と高ノ師直も、舷を接している隣の船からはいって来て、同じような焦躁をおもてに持ち、尊氏へむかって言った。
「殿。いまだに頼尚がもどって見えませぬが」
「ム。どうしたか?」
「それに、上流の煙を見て、さきに上陸したお味方の面々も、何の連絡もしてまいりません」
「妙だな。声だにせぬ」
「もっとも、この暗さ。浦も川すじも、芦屋一帯が闇と風音ばかりです。が、どうもこの地は吉い気配とも思われませぬ。いちど貝を吹かせて、こころみに、おひきあげを命じてみてはいかがでしょうか」