Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
卯木の良人も言っていた。「赤鶴一阿弥は近ごろの稀れな名人です」と。
しかも賃銀は、一作の仮面も、なお一俵の玄米にもならぬ程だそうである。でも不足顔ではない。充ちきっている。しかもこの芸魂の物はあとにのこり、世々の人を愉しませるにちがいない。
翁はそれがよろこびでこう老いも知らない燃焼に日長もわすれているのだろうか。いや、そんな名利もまったくないのかもしれぬ……。ないだろう、無我な仕事ぶりにはそんなふうなどみじん見あたらない。
正成は、つい、かえりみる。じぶんらの武門、武士というもの、それらの世界の人間はどうか。
――こうしているあいだじゅう、彼は何かはずかしさにしびれ、自身がこのへんの領主であるなどは、思ってみるのも辛かった。なぜ武門には生れたろうか。ひそかな悔いすらおぼえるのだった。
いやいや、とまた思う。――この仮面打ちの老翁にしろ、語らせれば、人間の子、その生い立ちから、この年まであるいてきた世路の途中では、さまざま、涙なくては語れぬような過去も持っているかもしれない。おそらくはそうだろう。――生国にもいられず、こんな他国へ来て、孤独をこうしてひとり侘び暮らしているからには。