Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate
簿に印した以外の武士でも、帰るが望みという者あれば、こころよく、今朝、放ちやるがいい。そう言い渡せ」
「はっ」
正季は立った。兄の覚悟は十二分察知していると思う正季だったが、この朝ほど、その静かな心の底に冷やと触れたことはなかった。正季にすれば、おなじ決死の覚悟ではいても、まだ多分に、足利勢を破って、勝つ望み、生きての望みを、捨ててはいず、また捨て切ッた覚悟ではなかったのである。
まもなく、正成も立って。
「馬を!」
夜営は、一瞬にたたまれ、桜井寺の角から西国街道へ、先駆はすぐ流れ出している。
そこを曲がるとき、正成は、ふたたび正行を辻に見た。小さい姿は茫とした顔して佇んでいた。現実の必然やこの酷い流れが一小冠者の思慮には余るものらしかった。
たちまち、苛烈な空間が父の背と子のあいだをみるまに遠ざけていた。――と思うと、この朝、列伍に外された帰郷組の将士のうちから、とつぜん「おやかたさま! おやかたさまアっ」と、死線に目をつぶるように追ッかけてゆく兵がワラワラあった。二十人、三十人とつづいて、それは埃りをあげて正成のあとを追い慕った。それを見ると、正行もまた本能的に駈け出しかけた。