Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(七) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 330.262 caratteri · 662 schermate

Aozora Bunko

すぐ口どめしておけ」

「まこと、いまの仰せに、相違ございませぬなれば」

「降伏でないことか」

「はい」

「上書は、降をお勧めするこころでは書いたものだ。しかし、山上の皇にも御体面というものがある。わけて豪邁なる後醍醐のきみ。不遜な文言はことをこわす。ただ皇が山を降り給うて、洛内への御還幸とさえなるなれば、それでよからん。……ま、名目などは、どちらでもいいのだ。しぜん、義貞のたちばはなくなる。義貞をはたきおとす。……それで事はさだまるとわしは思う。さだまったあとの始末はまたそちにまかせる。これは大人の役目だ、直義もだんだん大人になってもらわねばこまる」

「…………」

「それにはや、冬の寒さもやって来た。洛中の難民も、もとの住み家へ返してやらねば、この冬、幾万の死者が出ようも知れぬ。かつはまた、丹波の奥、梅迫の山家に難を避けておられる兄弟の母上、わしの妻子らも、早う都へ迎え取りたい。直義は久しく会わぬ母者を見たいとはおもわぬか」

直義は、眸をそらした。両手を膝に、いつか、さしうつむいていた。

里ですらもう寒い旧暦の冬十月だった。山上の寒さは骨身にしみる。

わけて、こがらしの吹きすさぶ夜は、大岳の木の葉が、御簾のあたりを打ッて、ともし灯のささえようすらないのであった。