Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
途中、さんさんと粉雪が降りだして来て、五条をわたるころには、車のうえにも、道誉好みな彼の綺羅な陣座羽織の肩へもはだらに白いものが降りたかッていた。
だが道誉は、雪風の冷たさなど忘れている。事の成功もうれしいし、元来が舞台廻しの策士でもある。こんなことが好きなのだ。そして独り空想する。
「まずはよし。これでお獄舎の正月も来よう。いや今宵すぐにも、獄内は春景色かな。ただ近習のお二人は、悩まされようて」
変りはてた先帝の影を獄中のほの暗い所に見いだしたとき、三人の妃は、しぜんにみなそれぞれちがった悲しみようをその姿にみだし合った。
妃たちは帝をとりかこんだ。わっと泣いて小袿衣のたもとに黒髪を埋めたまま、童のようにヨヨと泣きじゃくってやまないのは権大納言ノ局であった。また、
「あな、おいたわしや」
と沁んみりさけんで、いらいの憂さ辛さを、涙ながら掻き口説くのは小宰相の君だった。
ひとり三位ノ局廉子だけは泣きもしない。泣く以上なものをじいんと黛に耐えている白い顔なのだ。きッと結んだままな唇も風雪に抵抗する冬牡丹のつぼみの紅を置いたようである。いうに勝るものを……聞かまほし……とするのだろうか。