Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate

Aozora Bunko

それさえあるに、鯰峠に立たせて、有年方面を監視させておいた物見の者が、怯え立って、みなぞくぞくと逃げ走って来た。

「ご一同、ご猶予はなりませぬぞ」

「いまにもこれへ見えましょう。敵の千葉ノ介、小山秀朝の東国勢六、七百人」

「はや有年川を渡り、鯰峠の東谷から登りへかかっておる様子」

「輿は一つも見えず、騎馬も少なく、みな身軽な決戦いでたちで、その迅いこと、驟雨のようです」

かたちは逆転した。

いつのまにか、ここの埋伏の陣は、逆に、敵の巧みな網のうちになっていたのである。

「もう、だめだ」

権ノ五郎が叫ぶ代りに、二百の部下が一せいに騒ぎ出した。

「犬死にすな」とも言い合うのだった。元々、松田の直臣でなく、いわば烏合の残党である。こうなると脆い弱点を、高徳は初めから知っていた風である。だから慌てはしなかった。

「権殿。お退きなさい。この高徳にかまわず、一刻もはやく、大安寺のお父上をお扶けなされい」

「備後どのは」

「てまえは、一人で残る」

「え。お一人で」

「む。帝のおあとを慕うてまいる。そして幸いに、もし御座に近づきうれば」

彼がみなまでいわないうちに、大覚寺ノ宮も列を出て、高徳のそばに立たれた。