Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(三) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 222.108 caratteri · 446 schermate
正成出仕
これでは、かれらの火に油をそそぐばかりと、ひとまず、ご賢慮を伺いに立ち帰った次第でござりまする」
「…………」
正成の影は氷ったもののように見えた。いつか四辺は暮れかけていたのである。金剛山は藍のなかに、四日月の光が細い。そして千早川の水音だけが、地底からのものみたいに淙々と俄に寒さをおもわせる。
「……よしっ。わしが行こう」
正成は、卯木もそこにおきわすれて、大股に庭門、厩門と急ぎ抜けて、
「馬を。――馬を曳け」
と、侍長屋へ呼ばわった。
そして往来へ出た正成の姿が、黒鹿毛の狂いを乗りしずめて、鞭を小手に持ち直したときだ。
彼方からヒラヒラ見えた松明と二、三の人影が、
「勅使です。勅使です」
と、警蹕のように叫びながら走って来た。
正成出仕
勅使もただの勅使でない。
――笠置からわずか三日路たらずの道も、千里潜行ともいえる辛苦をなめて来たであろう藤房。
たそがれ前に、錦織の金剛寺の別坊にたどりつき、
「みことのりを帯びて、楠木家へ下向のもの」
と、告げたので、坊中の驚きとなり、すぐさま彼のために、輿を仕立て、坊の人々が松明を打ち振って、その先触れに駈けて来たものだった。