Classici giapponesi con furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Leggi 私本太平記(五) (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 252.330 caratteri · 505 schermate
「女? 女など」
「いやそれが、ここらの磯女ともみえません。眉目の美い……」
「売女だろう。壇ノ浦のむかしに似て、北条氏の諸家の奥に仕えていた女たちが、あわれ、色をひさいでいるとか」
「でも、そんな者からでも、御台所(登子)のご消息が聞き出されぬともかぎりますまい」
師氏はもう歩いてそこを覗いていた。屋根には石はのせてあるが強風にあえば吹き飛ばされそうな板囲いとむしろ戸だけの浜小屋だった。
覗いても、よくよく、ひとみをこらさねば内のもようは分らない。小さい灯皿。そして櫓やら網やら雑器などが鼠の巣みたいなワラの中に、骨と皮ばかりなひとりの翁が虚脱したような眼でぼやッと坐っている。
「女は? ……たしかいま、女がここへ走りこんだはずだが」
翁は唖か。ただ首を振る。
何もいわない。
やや威嚇を用いてみても、老いた鹿のような湿ッぽい眼をただショボショボさせるだけだった。
だが、師氏はやがて知った。翁のうしろに、女の裳か袂かがチラと見え、上から蓑をかぶッて打臥している様子なのだ。彼は、はったと翁をにらみつけて、
「なぜ隠す! 居るではないか」
と、近づきかけた。
翁は、ぱっと立って、師氏の胸をさえぎった。