Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Leggi 私本太平記 (しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 126.598 caratteri · 254 schermate

Aozora Bunko

その手は、暗い波間で何かをつかんだ力だった。ごくと、込みあげるものも一瞬は呑まれて、わっと声と涙が堰を切ったのは、後からだった。

「…………」

須弥壇の観音像は、二つだが全く一つとなっている夫婦というもののこんな場合のすがたを、微笑の下に見おろしていた。雨露次の手には、妻の薄い背を打つ喘ぎが、いつまでもわかっていた。そっともとの寝どこへ横たえようとしても、離れようとはせぬ卯木であった。

「……泣くな。もう、わしはどこへも行きはせぬ。六波羅兵は去んだ、難儀も去った。もうもうどんな事があろうと、再び、そなたの側を離れることではない」

「それは、うれしゅうございますが、ただ、申しわけないことを。……あなたに、申しわけがなくて」

「嬰児の死か」

「……見てくださいまし。……見てやって。……すやすやと眠っているような、この顔を」

「わるかった。みんなこの身の」

「いいえ、わたくしとても」

「なんの、舟住居の産後の冷えに、そのうえにもまた、この災難じゃ。したが、かかる酷い世に、このような親効いもない親の下に生れたのが、そもそも、運のない子。……ま、気をとり直せ。せめて、夫婦して、子の通夜など、今夜はここで営んでやるしかあるまいが」