Classici giapponesi con furigana
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くうをとぶパラソル
空を飛ぶパラソル
夢野 久作
Leggi 空を飛ぶパラソル (くうをとぶパラソル) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.190 caratteri · 40 schermate
線路の左右の田の中から、訳のわからない叫び声があとからあとから起るのを聞き流しながら……。
まだ生きているのと同様に温かい女の屍体を、仰向けに引っくり返して見ると、どんな風にして車輪にかかったものか、頭部に残っているのは片っ方の耳と綺麗な襟筋だけである。あとは髪毛と血の和え物みたようになったのが、線路の一側を十間ばかりの間に、ダラダラと引き散らされて来ている。その途中の処々に鶏の肺臓みたようなものが、ギラギラと太陽の光を反射しているのは脳味噌であろうか。右の手首は、車輪に附着いて行ったものか見当らず、プッツリと切断された傷口から、鮮血がドクリドクリと迸しり出て、線路の横に茂り合った蓬の葉を染めている。その他の足袋の底と着物の裾に、すこしばかり泥が附いているだけで、轢死体としては珍らしく無疵な肉体が、草の中にあおのけに寝て、左手はまだシッカリと前裾を掴んでいた。
私はチラリと汽車の方をふり返りながら、その左手を着物から引き離して検めてみた。手の甲も、掌もチットも荒れていないようであるが、中指の頭にヨディムチンキが黒々と塗ってあるのに、そこいらが格別腫れても傷ついてもいないところを見ると、刺か何かを抜いたあとを消毒したものであろう。