Classici giapponesi con furigana
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かまどのなかのかお
竈の中の顔
田中 貢太郎
Leggi 竈の中の顔 (かまどのなかのかお) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7439 caratteri · 15 schermate
※(ローマ数字1、1-13-21)
※(ローマ数字1、1-13-21)
「今日も負かしてやろうか」
相場三左衛門はそう云ってから、碁盤を中にして己と向いあっている温泉宿の主翁の顔を見て笑った。
「昨日は、あまり口惜しゅうございましたから、睡らず工夫しました、今日はそう負けはいたしません」
主翁は淋しそうに笑って手にした石をおろしはじめた。
「そうか、それは油断をせられないな、小敵と見て侮ることなかれ、か」
三左衛門はあっちこっちに石を置いている主翁の指端の顫えを見ていた。それは主翁の神経的な癖であった。
「今日はそうは負けませんよ」
主翁はひどく碁が好きであったが、それは所謂る下手の横好きで、四目も五目も置かなければならなかった。それでも三左衛門は湯治の間の隙潰にその主翁を対手にしていた。
「それでは負けないように願おうかな」
三左衛門は江戸を出てこの箱根の山中へ来てからもう二十日あまりになっていた。
「それでは、今日は勝ちましょうか」
二人のおろす石の響きが思いだしたように響いていた。それは初夏の明るい日で開け放した障子の外はすぐ山路になっていて、そこをあがりおりする人の影が時とすると雲霧のように薄すらした影を曳いた。