Classici giapponesi con furigana
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そまつなはなたば
粗末な花束
宮本 百合子
Leggi 粗末な花束 (そまつなはなたば) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6227 caratteri · 13 schermate
そこは私が見てさえ、商売上得な位置とは思えなかった。車道を踰えて鋪道にかかったばかりの処だから、頻繁な交通機関をすりぬけるに幾分緊張した交通人達は、大抵一二間ゆとりない惰力的な早足で通り過た。彼等は、勿論薄暗い左手の街路樹の下に、灯もなければ物音も立てず、しんと侘しげな小露店があることさえ殆ど心付かない。蛾のように、明るさに牽きつけられた者は、前方にいそぐ。どういう拍子か私の目を止めた外国人の貧しい露店は、そんな損な処にいる上、実に小さな、飾りけないものであった。
店と云えば、僅か二尺に三尺位の長方形の台がある許りだ。白布がいやに折目正しく、きっぱりかけてある。その上に、十二三箇小さな、黄色い液体の入った硝子瓶がちらばら置かれている。白布の前から一枚ビラが下っていた。
「純良香水。一瓶三十五銭」
台の後に男が立っているのだが、赧っぽい髪と、顎骨の張った厳しい蒼白な顔つきとで、到底、買いてを待つ商人とは思えなかった。兵隊であったかと感じる程、身じろぎもせず、げんなりした風もなく突立っている。見て、寒い恐怖に近いものが感じられた。男は、峻しい冷静なその台の番人で、香水と称す瓶のなかみは、可愛い好い香など決して仕ない色つけ水でありそうな気がする。