Classici giapponesi con furigana
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こうばいのきゃく
紅梅の客
吉川 英治
Leggi 紅梅の客 (こうばいのきゃく) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7574 caratteri · 15 schermate
近ごろ愉快きわまる酒景であったには相違ない。吉田さんも久原老も『おもしろかったナ』と、子供のようによろこんで無事にというもおかしいが、無事に帰ったそうである。伊東行の列車中の退屈も、私は彼のはなしで笑わされ通しで、近来になく、何とも豊かな幸福感になっていた。
だが、そのあとがちと悄ンぼりなのである。今ちゃんがつい、ついでに洩らした腹痛だった。当日の会計はもちろん今ちゃんの家へとどいてきた。さすがその額ここではオクビにも言わない。だが車窓にもたれていた今ちゃんの顔には夕陽があたっていたせいか、熱いお風呂の中で我慢している人の額みたいな色が見える。『なあにネ、たいしたもんじゃありませんよ、いまの吉原たって、型はないしさ、酒場で正気を失ったほどでもありませんからね』と、そう言ってるだけになおさら不びんな友情をひそかに禁じえなくなる。明治の書生はよくこういう我慢会みたいな真似をしてあとで眼を白黒させたものである。だが現代の作家今ちゃんにそんな遺物の気質がなお残っていようとは、思いもおよばぬことだった。前首相、前財界の雄、現大臣の大物三客を招待して、時は奈良茂、紀文の世を去ること二百余年ではあったが、たとえ半日でも吉原の吉原残照をいろめかせたというのは、たいした我慢づよさだといってよい。