Classici giapponesi con furigana
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「もん」
「紋」
黒島 伝治
Leggi 「紋」 (「もん」) di 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4739 caratteri · 10 schermate
丘の上から振りかえると、猫はなお頻りに道を這いながらないていた。俥は、海辺の網小屋のところに止まっていた。黒く静かな入江には、漁舟が四五艘動かずに浮いていた。小島の青い松のかげからは、弁財天の鳥居が見えた。
ばあさんは、猫の毛のついた手籠を提げて丘を反対の方へ下った。これから七里ばかり歩いて、家へ帰るのである。
「紋」は、つい近ごろ、他家の台所で魚を盗んだり、お櫃の蓋を鼻さきで突き落して飯を食ったりすることを覚えた。そんな悪るさをするたびに、「茂兵衛ドンにゃ慾をしてこ猫に飯もやらんせによそでひろ/\するんじゃ。」とばあさんの家は、隣近所から悪く云われた。
「チョチョチョチョ、紋よ、われゃ、よそで飯を盗んで食うたりするんじゃないぞ。……家でなんぼでも食えエ。」ばあさんは、三度の食事毎に夫婦が食っている麦飯を、猫の飯椀に盛り上げてやった。ダシがらの鰯もやった。猫は舌なめずりをして、それを食うて腹をふくらした。それだのに、他所へ行くと、早速、盗みを働くのだった。
そうして、本職の鼠を捕る方は、おろそかになった。
「おりくよ、旦那んとこにゃ、雛を捕られた云うて大モメをしよるが、また家の紋が捕ったんじゃないんか。