Classici giapponesi con furigana
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ろうじゅんさ
老巡査
夢野 久作
Leggi 老巡査 (ろうじゅんさ) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8237 caratteri · 17 schermate
睦田老人は病人のように青褪めたまま事務室をよろめき出た。事件後間もない或る夕方のこと、小雨の降る中を人知れず、倉川家の門前に行って、心からお詫びをした時と同じ気持になりながら……そうして今となっては同じようなお詫びをイクラ繰返しても追付かなくなった彼自身の無能な立場に気付きながら……。
睦田老人はそれ以来、事務室へ新聞を読みに行かなくなった。五つ六つ読みかけている続きものの後段が、たまらなく気にかかるにはかかったが、しかしその間に又もや挟まれているかも知れない二人組の黒装束の記事のことを考えると、二の足を踏まずにはいられないのであった。
彼は今日も新聞を読みに行きたいのをジッと我慢しいしい門衛の部屋に腰をかけながら、ボンヤリと火鉢に当っていた。お天気がいいので急に殖えて来た蠅が二三匹、ブルブルンと這いまわっている汚れた硝子戸を見詰めていた。
門の前の空地の向うには、大きなS製薬会社のコンクリート壁が屹立っていて、ルンペンが三人ほど倚りかかっていた。そこは日当りがいいし、交番から遠くもあったので、いつも一人か二人のルンペンが居ないことはなかった。