Classici giapponesi con furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Leggi 耽溺 (たんでき) di 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 55.597 caratteri · 110 schermate
と言うので、僕は一円札があったのを渡した。
「二度と再び来るもんか?」こう、僕の心が胸の中で叫んだ。
僕が荷物を持って帰ったのを見て、妻は褥の中からしきりに吉弥の様子を聴きたがったが、僕はこれを説明するのも不愉快であった。
「あのくらいにしてやったんだから、義理にもお袋が一度は来るでしょう――?」
「そうだろうよ」僕はいい加減な返事をした。
「吉弥だッてそうでさア、ね、小遣いを立てかえてあるし、髢だッて、早速髷に結うのにないと言うので、借してあるから、持って来るはずだ、わ」
「目くらになっちゃア来られない、さ」
僕の返事は煮えきらなかったが、妻の熱心は「目くら」の一言に飛び立つようにからだを向き直し、
「えッ! もう、出たの?」と、問い返した。
吉弥の病気はそうひどくないにしても、罰当り、業さらしという敵愾心は、妻も僕も同じことであった。しかし、向うが黴毒なら、こちらはヒステリ――僕は、どちらを向いても、自分の耽溺の記念に接しているのだ。どこまで沈んで行くつもりだろう?
「まだ耽溺が足りない」これは、僕の焼けッ腹が叫ぶ声であった。
革鞄をあけて、中の書物や書きかけの原稿などを調べながら、つくづく思うと、この夏中の仕事は――いろんな考えを持って行ったのだが――ただレオナドの紹介ばかりが出来たに過ぎない。