Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

Leggi 肌色の月 (はだいろのつき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 50.706 caratteri · 101 schermate

Aozora Bunko

そのそばに、赤いペンキを塗ったオールが浮いている。ただごとではなかった。

呼鈴が鳴った。玄関へ出てみると、「湖水会管理人」という腕章をつけた男が、自転車をおさえて立っていた。

「おやすみのところを、どうも……大池さん、昨日、こちらへおいでになられたんでしょう」

「来ています。なにか、ご用でしょうか」

管理人はペコリと頭をさげた。

「いいえね、お宅のボートが流されているので、ちょっとおしらせに」

「それはどうもわざわざ……」

「大池さん、まだ、おやすみなんですか」

「いらっしゃいませんよ」

「へえ?」

眉の間に皺をよせ、久美子の顔を見つめるようにして、

「いらっしゃらないんですか」

「あたしの眠っているあいだに、出て行ったらしくて」

「ボートで?」

「さあ、どうだったんでしょう」

管理人は真剣な眼つきで額をにらみあげ、

「ふむ、どうしたんだろう。妙だな」

と独り言をいっていたが、なにか思いあたったようにうなずいて、

「大池さんは間違いなんかなさらないが、千慮の一矢ってこともあるもんだから……」

そういうと、自転車に乗って、湖の岸の道を、対岸のボート置場のあるほうへ飛ぶように走って行った。