Classici giapponesi con furigana
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えんようき
艶妖記
山本 周五郎
Leggi 艶妖記 (えんようき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.761 caratteri · 38 schermate
座敷はしんとしずまりかえった、空谷のようになんの物音もしない。人々は身動きもせず、呪縛されたように眼をみはり息をひそめて坐っている。ぜんたい今なに事があったのだろう、自分たちはいったいなにを見たのだろう、いま見た事は現実だろうか、それとも夢まぼろしの類いだろうか、――彼らは驚きかつ呆れかつ怖れかつおののきかつ怯えたあげく里心がついたとみえ、まず曲がりの山の頓八殿がもじもじ始め、
「ああそうだ、おらあ急用があったっけ」
こう云ってそろりと席をぬけた。さあ堰は切れた、
「そう云えばおらあ急用を忘れていた」
「おらあ急用を思いだした」
「急用をことづかった」
「急用の途中だった」
「急用が半端だから」
そしてたちまち客たちは帰り去ってしまった。――示威とひけらかしをこめた豪華なるべき祝宴はかくて開幕と同時に閉幕したが、翌日の輿入れは前代未聞の壮麗華奢を極め、先頭に飾り馬三頭、荷駄十頭、担ぎ荷十七荷、供人六十余人、乗替えの輿は五つというむやみな仕組だった。下松までは五里ある、花嫁殿は一里ごとに休み、そこで衣装を替え輿を替えてお立ちという次第だ。家を出たのが朝六時、下松へ着いたのが暮れ六時である。