Classici giapponesi con furigana
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えんしょ
艶書
山本 周五郎
Leggi 艶書 (えんしょ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 25.027 caratteri · 50 schermate
もっとも兄の用事は公務多忙のときで、これは年に二三回のことにすぎなかったが、――
さて彼は三月二日に、求真堂の師範から流儀の折紙をもらった。もらわずに終わる者よりましだろうが、二十一歳という年では決して早くはない。師範はそのとき次のようなことを云った。
「そのもとは精勤であるし、手筋も晩成型のようであるから、今後なお勉励すれば腕前はさらに上達すると思われる、どうか怠りなく修業を続けられるように」
出三郎は心の中で「どういたしまして」と呟やいた。彼はもともと剣術が好きではなかった。求真堂へ入門したのも長兄の命令で、剣術でもやったら少しはしゃっきりするだろう、という意見からであった。その兄も結婚し家督相続をしたいまでは、もう彼のことなどに関心をもっていないようだし、まったく予期しない「折紙」などもらったことではあり、自分ではもう道場をやめる決心をしたのであった。
「御期待にそむくようで恐縮ですが」と出三郎は云った。
「じつは家事の都合がありますので、残念ながら今日限り退門させていただきます」
師範はいい顔はしなかった。だがむりにひきとめたいというようすでもなかった。