Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あくたがわのことども

芥川の事ども

菊池 寛

Leggi 芥川の事ども (あくたがわのことども) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5580 caratteri · 11 schermate

Aozora Bunko

芥川は、そんなときあらわに希望を言う男ではないのだが、その時の眼付きは僕ともっと残って話したい渇望があったように、思われる。僕はその眼付きが気になったが、前にも言った通り芥川に顔を会わすのが、きまり悪いので、その当時用事はたいてい人を通じて、済ませていた。

死後に分ったことだが、彼は七月の初旬に二度も、文藝春秋社を訪ねてくれたのだ。二度とも、僕はいなかった。これも後で分ったことだが、一度などは芥川はぼんやり応接室にしばらく腰かけていたという。しかも、当時社員の誰人も僕に芥川が来訪したことを知らしてくれないのだ。僕は、芥川が僕の不在中に来たときは、その翌日には、きっと彼を訪ねることにしていたのだが、芥川の来訪を全然知らなかった僕は、忙しさに取りまぎれて、とうとう彼を訪ねなかったのである。彼の死について、僕だけの遺憾事は、これである。こうなってみると、瓢亭の前で、チラリと僕を見た彼の眼付きは、一生涯僕にとって、悔恨の種になるだろうと思う。

彼が、僕を頼もしいと思っていたのは僕の現世的な生活力だろうと思う。そういう点の一番欠けている彼は、僕を友達とすることをいささか、力強く思ったに違いない。