Classici giapponesi con furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Leggi 花と龍 (はなとりゅう) di 火野 葦平 (ひのあしへい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 410.131 caratteri · 824 schermate
このとき、背後で、馬の蹄の音がした。
「マン坊」
と、声をかけられた。
ふりかえると、馬に乗った一人の筒袖姿の青年が、ススキの深い曲り道から、姿をあらわした。
「時やんけえ、びっくりしたあ」
「びっくりするこたあ、なあじゃろ。狐じゃあるまあし。……ほれ、郵便じゃよ」
「どこからな?」
「門司の林助兄さんからと、……こっちの方は、専売局じゃ」
「専売局?」
マンは、どきっとした。
大川時次郎は郵便配達夫である。柿ノ坂の郵便局まで来る郵便物を、彼は馬に乗って、部落々々に配達して廻る。ときには、書留や小包などの大切な物も扱うので、信用の置ける者にしか委せられない。時次郎は、その点では村中での模範青年といってよかった。さらに、雨、風、雪、嵐のときにも、配達を休むわけにはいかないので、身体の頑健な者でないと勤まらない。その点でも、草角力の横綱である時次郎は、最適任者であった。
「おやあ」と、馬上から、時次郎は、マンの顔をのぞきこむようにして、「マン坊、泣いたのとちがうか」
「うんにゃ、泣きはせん」
「それでも、一杯、涙がたまっとる。マン坊の泣き虫は珍しゅうはなあが、また、村長の二男坊から、いじめられたとみえるなあ」