Classici giapponesi con furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Leggi 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.046 caratteri · 104 schermate
三
から起兼るのである。このまま中途半端でこの乱れた床の中に、帯紐解き乱したお千代の裸体を打捨てて行くには忍びない。打捨てて行くのはいかにも惜しいような勿体ないような心持になる。そこで帰りがけに慶三は既に帯まで締めてしまっても、いぎたなく取乱したお千代が、私ほんとに淋しいわと甘えるような調子を出したり、或はまたどうせ私はお妾ですからねと、本妻に対して嫉妬らしいような事でも云うと、慶三はもう無我夢中で、そのままお千代を抱きすくめたなり、ぐっすり宿込んでしまわねば、その場の納まりがつかないような気になるのであった。
三
二月ばかりは全く夢のように過ぎた。入梅が明けて世間は俄に夏らしくなり、慶三が店の窓硝子にもパナマや麦藁帽子が並び始めた。毎年の例として町内聯合で催す中元の売出しが始る頃から、町中の炎暑はめっきり加わって来た。本所の方で真症コレラが流行り出したという噂が毎日新聞を賑わした。暑い暑いと言出してから早くも半月ばかり雨は一滴も降らず、日毎きびしく照りつける日の光に、町中はどこも彼処も焼跡のような塵だらけで、歩道のほとりの並木は大分枯れかかっている。