Classici giapponesi con furigana
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しょうたく
荷風随筆集(下)〔全2冊〕
永井 荷風
Leggi 荷風随筆集(下)〔全2冊〕 (しょうたく) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.633 caratteri · 74 schermate
六
しかもそれは軽く淡く快き半音下った mineur の調子のものである。珍々先生は芸者上りのお妾の夕化粧をば、つまり生きて物いう浮世絵と見て楽しんでいるのである。明治の女子教育と関係なき賤業婦の淫靡なる生活によって、爛熟した過去の文明の遠いきを聞こうとしているのである。この僅かなる慰安が珍々先生をして、洋服を着ないでもすむ半日を、唯うつうつとこの妾宅に送らせる理由である。已に「妾宅」というこの文字が、もう何となく廃滅の気味を帯びさせる上に、もしこれを雑誌などに出したなら、定めし文芸即悪徳と思込んでいる老人たちが例の物議を起す事であろうと思うと、なお更に先生は嬉しくて堪らないのである。
六
お妾のお化粧がすむ頃には、丁度下女がお釜の火を引いて、膳立の準備をはじめる。この妾宅には珍々先生一流の趣味によって、食事の折には一切、新時代の料理屋または小待合の座敷を聯想させるような、上等ならば紫檀、安ものならばニス塗の食卓を用いる事を許さないので、長火鉢の向うへ持出されるのは、古びて剥げてはいれど、やや大形の猫足の塗膳であった。先生は最初感情の動くがままに小説を書いて出版するや否や、忽ち内務省からは風俗壊乱、発売禁止、本屋からは損害賠償の手詰の談判、さて文壇からは引続き歓楽に哀傷に、放蕩に追憶と、身に引受けた看板の瑕に