Classici giapponesi con furigana
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きくにんぎょう
菊人形
宮本 百合子
Leggi 菊人形 (きくにんぎょう) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7991 caratteri · 16 schermate
その右のはずれの一軒が、おゆきばあやの住居だった。
小さい根下りの丸髷に結って、帯をいつもひっかけにしめているおゆきは、その家で縫物をしていた。おゆきが針箱やたち板を出しかけている部屋のそとに濡れ縁があって、ちょいとした空地に盆栽棚がつくられていた。西日のさしこむ軒に竹すだれがかかり、風鈴の赤い短冊がゆれていて、なめたようにきれいな狭い台所口があいていると、裏の田圃が見えた。おゆきのうちには、猫がいた。
子供たちは、菊見せんべいへ行くとき、一緒に来る大人が母でさえなければ、おゆきのうちへよることが出来た。きょうは駄目ですよ、お母様がまっすぐ帰れとおっしゃいましたよ、と抗議が出ても、ちょっと! ほんとにちょっと! と、わたしは露路を曲った。おゆきの家と、そこに住んでいる、おゆきと浅吉とは、面白かった。
根下りの丸髷に結って、長煙管でタバコをのむおゆきは、不思議にうす黒い顔をしてやせていた。喉がどうかしたように、少しかすれた声で、小さい子供たちに、おや、いらっしゃいまし、と云った。そういう声で、おゆきは赤門の門番をしている夫の浅吉のことを、あっさん、あっさんと云って話した。