Classici giapponesi con furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Leggi 菊千代抄 (きくちよしょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.178 caratteri · 72 schermate
「――おそれながら、決してさような」
「では申せ、返辞を聞こう」
「――おそれながら、そればかりは……」
殆んど呟くような声であった。菊千代は全身の血が火になるような怒りを感じ、われ知らず膝が前へ出た。
「いえないというのは知っているからだな、半三郎、面をあげて菊千代を見よ、この眼を見るのだ、半三郎、面をあげぬか」
彼は静かに顔をあげた。菊千代はその眼を射止めるように見ながらいった。
「菊千代が女だということを、そのほう知っていたのだな」
「――はい」
「眼を伏せるな、そして、……それは初めから、知っていたことだな」
半三郎の眼が、然りと答えるのを認めて、菊千代は一瞬ふしぎな感覚に包まれた。それは絶望的な歓喜とでもいおうか、苦痛と快感とが複合した痺れるような感じのものであった。もし彼が知っていなかったとすれば生かしておいてもよい。生きていて欲しいという気持は充分にある、そのばあいはこちらから自分が女だったということをうちあけて、おそらくは泣いて彼にとり縋ったであろう。しかし彼は知っていた、それは菊千代にとっては凌辱に等しい。
――彼は自分にとって唯一人の者だ。