Classici giapponesi con furigana
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きくちよしょう
菊千代抄
山本 周五郎
Leggi 菊千代抄 (きくちよしょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.178 caratteri · 72 schermate
六
――悪かった、やり過ぎた。
あとでは悔みながら、やはり同じことを繰り返してしまう。その場になると自制するちからがなくなって、殆んど無意識に乱暴なことをしてしまうのであった。
菊千代は責められなければならぬだろうか。いや、彼女はのちに思い返しても否ということができる。彼女は誰よりも苦しんでいた。十五歳のあの時まで男であると信じ、男としてそだって来た。しぜんにふるまっていても言語動作はそのまま男とみえるに相違ない。しかし菊千代はもうしぜんな気持ではいられなくなっていた。男であろうとする意識がつねに頭にあった。
――女だということがわかりはしないか。
――あの眼は気づいた眼つきではないか。このように絶えず神経が尖って、奥にこもっているとき以外は心のゆるむ暇がなかった。それだけなら時間の問題かもしれない、馴れるにしたがって緊張も鈍ったであろう。だが彼女のからだがそうさせなかった。一日一日と見えるように、からだ全体が菊千代を裏切りはじめたのである。
六
なめらかに艶を増してゆく皮膚、量の多い髪毛、腰まわりから太腿へかけての肉付、ふくらんでくる胸乳。……菊千代はどんなにその一つ一つを呪ったことだろう。