Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Leggi 菊千代抄 (きくちよしょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.178 caratteri · 72 schermate

Aozora Bunko

しかし菊千代は松尾さえ近寄せなかった。

「来てはいけない、さがれ、さがっておれ」

こう叫んで松尾も寝所から出てゆかせ、独りで輾転と泣き、喚き、呻吟したということであった。……その発作中のこまかい事はよく覚えがない、ただ人に見られてはならないと思い続けたことと、そして次のような声が、頭の中で休みなしに聞えていたことは忘れられなかった。

「おまえは女だ、男ではない、女だ、おまえは女だ、女だ、男ではない、女だ、女だ」

二十五歳になって菊千代は嵩間領の中山の屋形へ移ったが、神経発作を起こした日からそれまでの生活は、少し誇張していうと荒暴そのものであった。扈従は矢島弥市のほか、つねに十五歳までの少年しか使わず、十五歳を越えるとすぐにやめさせた。薙刀、剣術などの稽古にはかれらに相手を命じ、心の昂ぶっているときにはよくけがをさせた。いちどは相手の少年が臆しているのに苛立って、その少年の腕を薙刀で打ち折ったことさえあった。

月に一度か、ときには続けて二度くらい、あの忌わしい夢が彼女を辱しめた。そしてその夢のあとでは、きまって同じ発作を起こして、まわりの者を驚かした。