Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

Leggi 菊千代抄 (きくちよしょう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.178 caratteri · 72 schermate

Aozora Bunko

狂気のように叫び続けたのを、自分でもおぼろげに覚えている。それと同時に、そのように泣き叫びながら、頭のなかでは記憶の幻影を追っていた。池が見え、広い御殿がみえ、ふいに視界が赤い色で潰され、老子の講義をする男が現われた。狂奔する馬の背にしがみついている自分。「かんぷり」と誰かの呼ぶ声がし、水の中を魚がすばしこく逃げる。そしてまた御殿の暗い部屋、その部屋が歌舞伎芝居の舞台になり、その舞台の上を、猫のような見知らぬ動物が横に走った……そしてこれらの変転する幻像の背景のように、古い二つの傷痕のある男の胸部が明るく暗く捉えがたいもどかしさで絶えず見えたり消えたりした。……痩せて蒼白い、男のあらわな胸、そこにある二つの古い傷痕。……それがいつまでも執拗に、変化する幻像の向うに見えるのであった。

「それをどけろ、どけて呉れ、斬ってしまえ、庭へひき出して……ああ」

菊千代は両手で顔を掩い押えようとする松尾の手の下で身もだえをした。

発作がまったく鎮まったのは三日めの夜半過ぎであった。心身消耗という感じでそれからはよく眠ったらしい、眼がさめると枕許に松尾が坐っていた。