Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きくやしき

菊屋敷

山本 周五郎

Leggi 菊屋敷 (きくやしき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.620 caratteri · 71 schermate

Aozora Bunko

十四

十四

そう心はきめたものの、いざとなると気臆れもし、またその方法にも迷った。もちろんじかに逢って話す勇気はない、といって手紙を遣るのはふたしなみのようである、いっそお萱のちからを借りようか、そんな風に考え惑いつつ徒らに日は経つばかりだった。ながい年月そっと秘めてきた心の手筺ともいえよう、蓋を明けたい気持はあっても、むざと鍵に手をかけられないのは当然だったかも知れない、こうして春も過き、夏も終りかけた或日のことだった。……夕餉の膳に向おうとしているとき、訪れる人の声がしてお萱が立っていった。そして戻って来ると一通の封書をさしだしながら、「お江戸の小松さまからお使です」と云った。

「小松から、……手紙だけですか」

「お使の者が持ってまいったようです」

「そう、晋太郎はさきへ召上れ」

志保はそう云って居間へはいり、妹の手紙を披いてみた。胸騒ぎを抑えながら読みすすめると、健二郎が死んだという文字にゆき当った、……志保はそこでひしと眼をつむった、それは次ぎにくる文字を読みたくないという本能的な動作だった、そのあとになにが書いてあるか直感でありありとわかる、石を投げられると無意識に手をあげて防ぐ動作をする、志保が眼をつむったのはそれとおなじものだった、そしてそのまま暫らくじっと息を詰めていた。