Classici giapponesi con furigana
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きくづきよ
菊月夜
山本 周五郎
Leggi 菊月夜 (きくづきよ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 16.129 caratteri · 32 schermate
一
一
「珍しい到来物があったのでね。茶を淹れてきましたよ」
若いはしたに茶道具を持たせて、そういいながらはいって来た母親のようすを見たとき、信三郎はすぐになにかはなしが出るなと思った。珍しい菓子というのは砂糖漬けの杏子だった。「あなたがお帰りだというので、疋田さまから届けてくだすったんですよ、絢子どののお手作りだそうです、召上ってごらんなさい」
「珍重なものでございますね」信三郎は、いわれるままに摘んでみた。しんなりとした歯ごたえの下から強い杏子の香が匂い、酸味と甘さの溶け合った、密度のこまかい味が舌の根までひろがってゆく、まさしく珍重というべきであるが、武家の質素な生活に慣れている者には、うまい、と思うよりさきに、贅沢だという感じのほうがつよくくる。――こういう味に狎れてはいけない、理屈でなく、そういう警戒をすぐに感ずるのだ。信三郎は一つ摘んだだけで壺の蓋をした。
「もっと召上れ……」
「いえもうけっこうです、茶をいただきましょう」
「あなたへといってくださったのだから召上がればよいのに、ではここへ置いておきますからね……」
「疋田どのがわたくしへというのですか」